Blog - 科学的

ヤマトシジミチョウ 20151101掲載

庭のオレガノに来たヤマトシジミ - 2015年9月10日

 琉球大学で、故大瀧丈二准教授の指導の下、グループを作ってフクシマのヤマトシジミへの放射能被曝の影響を研究されていた野原千代氏が亡くなられました。生物科学に親しんで育った者として、謹んでご冥福を祈ります。 

 研究内容については、以下のサイトに詳しく紹介されています。

http://www.swissinfo.ch/jpn/原発事故のチョウへの影響-スイスでの講演発表が大反響/41148962

http://saigaijyouhou.com/blog-entry-2568.html

http://saigaijyouhou.com/blog-entry-1291.html

 今、swissinfoの記事を読んで、特に気にかかることは、 

「羽化したチョウのうち、福島市と飯舘村2カ所のチョウの動きが山口県の葉を食べて育ったチョウに比べて、明らかにモタモタしている。毎朝、羽化するチョウがすべてそうなのです。大変な衝撃を受けました。これがいわゆる「原爆ぶらぶら病」なのかと感じました。

 しかし残念ながら、こうした事態を想定していなかったので、そのような動きの違いを定量化することはできなかった。ですから、形態異常が見られなかったそれらのチョウは、「正常」なチョウとしてカウントしています。」

 ここで科学者として、数値化(の準備)ができなかったことを述べています。科学のロジックは数値データと数式による解析によって為されます。解析にまで進めなかったことは、とても無念なことだったのではと思います。異常なチョウも「正常」とカウントされているので、脚(足)の異常ではなく、神経系の異常だと推測されます。運動の変異性の数値データ化と、(おそらくは血液により運ばれた)放射線被曝の関係を解き明かせば、放射線被曝の影響が、より見えて来たに違ありません。脳細胞と被曝の関係を生理学的に追求することも可能だったように思います。もちろん、それがヒトにすぐに当てはまるとは言えません。しかし、低線量被爆で体内に取り込まれた放射能が、広範囲にDNAに影響することはすでに認められているとみなしてよいでしょう。しかも、影響を受けたDNAが、どの位後に異常を発現するかまでの期間(潜伏期)には、一定の法則が見つかっていません。ですから、「ただちに影響は無い」という言葉は、「もしも、ただちに影響は無くても、(個体によっては)将来的に影響がでる可能性がある」と言うべきでしょう。

 フクシマの放射能被曝の人体への影響はうやむやにされ、さらに、放射能汚染された物質(食品・瓦礫等)は、さまざまな倫理的洗脳と共に、日本中(あるいは世界中)に広められました。そして、国と地方自治体・関連企業の思惑で、原発の再稼動が始まっています。いったい、事故が無ければ、原発そのものは安全なのでしょうか。 

 原発メーカー訴訟の会・本人訴訟団などの反原発運動体は、先日、韓国から来日したイ・ジンソプさんの講演を日本各地で行いました。彼は、韓国の古里(コリ)原発近くに住み、彼は大腸癌、妻は甲状腺癌、子供は先天性自閉症を発症しました。被曝と健康障害の因果関係に関して、韓国水力原子力(株)を相手に訴訟を起こし、勝訴。国水力原子力(株)は賠償を命じられた。このことは、非原発(No Nukes)への非常に大きな前進と言えるでしょう。しかし、ジンソプさんに直接聞きましたが、韓国水力原子力(株)は放射能漏れに対する安全対策を行わないまま運転を継続しているそうです。

Parolemerde 2001
2015年11月1日

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